土地・建物の賃貸借契約(借地契約・借家契約)の契約期間

 土地の賃貸借契約(借地契約)や建物の賃貸借契約(借家契約)を結ぶ際に、契約期間を決めることになります。契約期間については、土地の賃貸借か、建物の賃貸借か、土地の賃貸借であれば、借地借家法や借地法の適用があるかどうかで、規制の内容は4パターンに分かれています。
 以下、それぞれについて整理していますので、ぜひご覧ください。

1 建物の賃貸借(借家契約)の場合

1.1 契約期間の規制

 建物賃貸借の契約期間について、1年未満の期間を定めた場合は、期間の定めのないものとして扱われます(借地借家法29条1項)。
 期間の定めのない建物賃貸借の場合、いつでも解約申入れをすることができ、賃貸人からの解約申入れなら申入れから6か月後(借地借家法27条1項)、賃借人からの申入れなら3か月後に契約が終了します(民法617条1項2号)。
 ただし、賃貸人からの解約申入れには、正当事由が必要とされており、正当事由のない解約申入れであれば契約は終了しません(借地借家法28条)。
 契約期間の上限についての規制はありませんので、当事者間で、20年以上など、相当長期の期間を定めることも可能です。なお、定期借家契約(借地借家法38条)など特殊な契約の場合には、1年未満の期間を定めることも可能です。

1.2 更新後の契約期間

 契約期間が満了した場合、契約を更新することがあると思いますが、契約更新後の期間についても、上記と同じで、1年未満の期間を定めた場合には、期間の定めのない契約となります。上限についての規制はありません。

2 土地の賃貸借(借地契約)の契約期間-建物所有以外の目的の場合-

 建物所有以外の目的の土地の賃貸借契約には、借地借家法の適用はありません(借地借家法2条1号参照)。たとえば、駐車場や資材置き場などとして土地を貸し出す場合などがこれにあたります。
 契約期間は、民法にしたがって決めることになりますが、民法では、賃貸借の契約期間について、20年を上限としています(民法604条1項前段)。これより長い期間を定めた場合でも契約期間は20年となります(民法604条1項後段)。下限については定めがありませんので、20年以内の期間で、自由に決めることができ、たとえば、契約期間を1ヶ月とする短期の契約もできます。
 期間を定めなかった場合、貸主、借主のどちらからでも、いつでも解約の申入れができ、申入れから1年間経過後に契約が終了することになります(民法617条1項1号)。

3 土地の賃貸借(借地契約)の契約期間-平成4年7月31日以前の契約の場合-

3.1 借地法の適用

 土地や建物の賃貸借については、現在、借地借家法という法律があることをご存知の方も多いと思います。以前は、借地借家法ではなく、「借地法」と「借家法」という法律があり、これを合わせ、中身を変えて「借地借家法」という法律が作られました。
 これは意外とあまり知られていませんが、借地借家法の施行日(効力発生日)である平成4年8月1日より前(平成4年7月31日以前)に結ばれた土地の賃貸借契約(借地契約)の期間に関する規制は、借地借家法ではなく、「借地法」が適用されることになります。
 借地借家法と借地法では、契約期間の定めに関するルールも異なっていますので、借地法による契約期間のルールについて、詳しく見ていきましょう。

3.2 契約期間を定めなかった場合

 契約時に、契約期間を定めなかった場合、借地法により、契約期間が決まることになります。借地法では、借地契約の契約期間について、借地の上に「堅固建物」(鉄骨造りや石造りなどの頑丈な建物等)を建てる目的であった場合には、60年になるとされています(借地法2条1項)。
 また、「非堅固建物」(木造などの頑丈ではない建物)を建てる目的であった場合には、契約期間は30年となります(借地法2条1項)。
 このように、建てる建物の種類に応じて契約期間が異なっているのが特徴的です。なお、契約で「堅固建物」を建てることが目的であると明示されていない場合、「非堅固建物」を建てる目的であったものとみなされます(借地法3条)ので、契約期間は30年となります。

3.3 契約期間を定める場合

 契約時に、契約期間を定める場合でも、借地法で、その最短期間が決められています。
 「堅固建物」の場合、契約期間は最低30年、「非堅固建物」の場合、契約期間は最低20年とされています(借地法2条2項)。これより長い期間を定めることは自由で、上限はありません。
 仮に、これよりも短い期間を定めた場合には、借地人に不利な条項として無効となり(借地法11条)、期間を定めなかったものとみなされます。その結果、契約期間を定めなかった場合と同様に、「堅固建物」は60年、「非堅固建物」は30年となります。

3.4 契約更新後の契約期間

 契約更新後の契約期間も借地法により決められています。
 「堅固建物」は最低30年、「非堅固建物」は最低20年(借地法5条1項)としなければならず、当事者がこれより長い期間を定めることは可能です(借地法5条2項)。その場合の上限はありません。
 なお、借地借家法の施行日(効力発生日)である平成4年8月1日以降に、契約を更新する場合でも、最初に借地契約を結んだのが平成4年7月31日以前であれば、借地借家法ではなく、借地法が適用されることになり、契約更新後の期間についても、借地法にしたがうことになりますのでご注意ください。

4 土地の賃貸借(借地契約)の契約期間-平成4年8月1日以降の契約の場合-

4.1 契約期間を定めなかった場合

 借地契約のうち、建物所有を目的とし、平成4年8月1日以降に契約されたものには、借地法ではなく、借地借家法が適用されます。
 契約時に、契約期間を定めなかった場合には、その期間は30年となります(借地借家法3条)。

4.2 契約期間を定める場合

 契約で期間を決める場合は、その期間は最低30年としなければなりません(借地借家法3条)。当事者間で、これより長い期間を定めることはできますが、短い期間を定めることはできません。これより短い期間を定めた場合には、その定めは無効となり、期間は30年とされます。
 結局、借地借家法が適用される土地賃貸借では、一時使用目的(借地借家法25条参照)などの特殊な場合を除いては、期間が30年未満のものはあり得ないということです。

4.3 更新後の存続期間

 契約の更新後の存続期間は、1回目の更新のときは最低20年、2回目以降の更新のときは、最低10年としなければなりません(借地借家法4条)。このように、何回目の更新かにより、期間が異なっています。当事者間で、これより長い期間を定めることはでき、上限はありません。
 期間を定めなかった場合や、これより短い期間を定めた場合は、1回目の更新のときは20年、2回目以降の更新のときは10年が存続期間となります。

5 まとめ

 以上のように、賃貸借契約の契約期間に関するルールは、建物の賃貸借か、土地の賃貸借か、土地の賃貸借であれば、建物所有を目的としたものかどうか、または平成4年7月31日以前に契約したものかどうかにより、4パターンに分かれています。
 契約がこのうち、どれにあたるかを当てはめて、契約期間のルールがどのようになっているかを確認してみてください。

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