定期借家契約を結ぶための条件と注意点

 定期借家契約は、契約の更新がなく、契約期間の満了により契約が終了するという点で、貸主にとってとても有利です。今回は、定期借家契約を有効に結ぶための条件や注意点について説明します。

1 定期借家契約とはどんな契約?

 通常の借家契約では、契約期間が満了しても、正当事由がなければ契約が更新(法定更新)されてしまい契約を終了させることはできず、その後も、借家契約は続いてしまいます。借主が任意に出て行ってくれればいいのですが、そうではない場合、出て行ってもらうのはなかなか難しいというのが実情です。貸主としては、それでは困るということで、作られたのが定期借家契約(借地借家法38条)です。
 定期借家契約では、契約の更新はなく、契約期間が満了した時点で契約が終了して借主に出て行ってもらうことができます。契約の終了に、正当事由は必要ありません。
 3年後にビルを建て替える予定なので、建替えまでの3年間だけ賃貸したい、2年間の海外出張があり出張期間だけ自宅を賃貸したい、というような場合にとても便利です。逆に、このような場合に定期借家契約にしておかないと、契約期間が終了したけど法定更新されてしまって出ていってもらえない、出て行ってもらうのに多額の立退料の支払が必要になるといった不都合が生じる可能性があります。もちろん、このような事情がなく、とりあえず契約期間を2年間にしておきたいというような場合でも、定期借家契約にすることは可能です。

2 定期借家契約にするために必要なこと(要件)

2.1 定期借家契約の要件(借地借家法38条)

 定期借家契約を結ぶためには、以下の要件を満たす必要があります。

 ①書面により契約をすること
 ②契約期間を定めること
 ③契約書の中に、契約の更新がなされないということを定めておくこと
 ④契約の前に、借主に対して契約の更新がないことを説明しておくこと

 これらのうち、1つでも欠けてしまった場合は、定期借家契約ではなく、通常の借家契約として扱われてしまいますのでご注意ください。

2.2 ①書面により契約をすること

 通常、契約は、口頭により合意した場合でも成立しますが、定期借家契約は書面で行わなければならないとされています。

2.3 ②契約期間を定めること

 通常の借家契約では、契約期間を定めない契約も可能ですが、定期借家契約では必ず契約期間を定めておかなければなりません。なお、契約期間について、通常の借家契約では、1年未満の契約期間を定めた場合には、期間の定めのない契約とみなされてしまい、1年未満の契約はできませんが(借地借家法29条1項)、定期借家契約ではこのような制限はなく、期間を1年未満とすることも可能です。

2.4 ③契約書の中に、契約の更新がなされないということを定めておくこと

 定期借家契約では、契約の更新がなされない旨を、契約書の中で明確に定めておく必要があります。「契約の更新がなく、期間が満了すれば契約は終了する」というような定めをしておいてください。

2.5 ④契約の前に、借主に対して契約の更新がないことを説明しておくこと

 契約の締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了する旨を書いた書面を借主に渡し、説明しなければなりません。気をつけなければならないのは、この書面は契約書とは別に作成しなければならないという点です。契約書に記載してあるというだけでは、この説明義務を果たしたことにはならず、定期借家契約の要件は満たしません。
 なお、説明の時期は、契約締結の前であればよく、契約締結と同じ日に行われても問題ありません。

3 定期借家契約を終了させるために必要なこと

 定期借家契約の期間が終了した場合に、借主に出て行ってもらうには、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間満了により契約が終了する旨の通知をしておく必要があります(契約期間が1年未満の場合は不要)。この通知を行っておけば、期間満了時に契約は終了し、借主に出て行ってもらうことができます。
 終了の通知が、契約終了の6か月前から契約期間の満了時までの間になされた場合には、契約期間の満了時に契約が終了したことを借主に主張できず、通知から6か月間が経過した後に、はじめて主張することが可能になります。たとえば、契約期間満了の2か月前に終了の通知がなされた場合には、期間満了時から4か月後(通知の時から6か月後)に契約の終了を主張して、借主に出て行ってもらうことができることになります。

4 契約終了後の再契約

 定期借家契約は、期間の満了により終了しますので、契約の「更新」ということはあり得ません。
 もっとも、契約の終了後に、新たに定期借家契約を結び直すということは可能です。この場合は、新たに契約をすることになりますので、定期借家契約を締結するための手続(上記2)をあらためて行う必要があります。この手続を怠ると、定期借家契約ではなく、通常の借家契約となってしまいますのでご注意ください。
 また、契約書の中で、借主に、契約終了後当然に再契約がなされることを期待させるような記載をしてしまうと、契約の更新がないということと矛盾しているとして、定期借家契約ではなく、通常の借家契約であると判断される可能性もありますのでご注意ください。契約書の中に書いていなくても再契約をすることは可能なので、このような誤解のもととなってしまうような記載はしない方がよいでしょう。

5 まとめ

 通常の借家契約は、期間が満了しても正当事由がない限り契約が更新されるので、借主が出て行くと言わない限りは、なかなか出て行ってもらえないというのが実態です。この点、定期借家契約は、契約の更新がなく、期間の満了により確定的に終了するという意味で、貸主にとって非常に有利ですので、使い勝手のよい契約であるといえます。
 ただし、定期借家契約であるということは、借主にとって相当なマイナスになりますので、通常の借家契約より借り手が見つけにくい、または家賃が下がってしまうというデメリットもあります。この辺りのバランスも考えた上で、有効に活用していただければと思います。

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